BPSDの予防法と発現機序に基づいた治療法・対応法の開発研究
 「BPSD予防法と発現機序に基づいた対応法マニュアル」を作成しました。この研究により得られた成果を、マニュアルやガイドラインの普及を図るために公開します。

 認知症のご本人には、物忘れや道に迷うというような認知障害とともに、行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptom of Dementia)と呼ばれる症状を認めることがあります。BPSDには、幻が見える、怒りっぽい、不安が強い、何もしないなどの症状が含まれます。 BPSDは認知症の全ての方に認めるわけではありませんが、一度出現すると治療に難渋することが多い症状です。BPSDの治療の基本は、まず周囲の人が、認知症のご本人の身になって、何故、そのような症状が出ているのかを推察して、接したり声かけしたりすることです。しかしBPSDの原因や理由を推察することは、なかなか難しいため、うまく奏功するか、しないかは浮動的です。
 今回、私たち、認知症の専門家であり、かつ神経心理学の専門家が集まり、BPSDに対する2つの治療的アプローチについて研究しました。そしてその成果をこのホームページで公開することにしました。ちなみに、神経心理学とは、「ヒトの脳と心、脳と行動の関連を研究する学問領域」で、記憶、言語、感情などが脳の中でどのように成立しているのかを解明し、治療に役立てることを目的としています。
 1つめのアプローチでは、BPSDの予防に役立つ資材を作成しました。BPSDが出現しないように、あるいは出現しかけたときにすぐに対応できるようにするためには、BPSDに早く気づく必要があります。そこで、どのような病気の、どのような時期に、どのようなBPSDが、どのような頻度で出現するのかを、2447人の認知症の方のデータを基に明らかにした「BPSD出現予測マップ」を作りました。また介護サービスでBPSDを予防・治療する際に有用な「BPSD治療に役立つ介護サービス」もまとめました。さらに認知症の前段階である「軽度認知障害の段階でBPSDを予防するマニュアル」、「BPSDの予防を目指した睡眠障害対応マニュアル」も作りました。
 2つめのアプローチに関しては、現在、対応に難渋するBPSDのうち「嫉妬妄想」、「幻視」、「前頭側頭型認知症に特徴的ないくつかのBPSD」、「意欲低下・無為(アパシー)」をとりあげ、これらの症状が出現するメカニズムに注目した早期発見ツール、対応マニュアルを作りました。さらには前頭側頭型認知症の方で、しばしば対応に困る食事の際のBPSDに対して有効な「懐石個別介入法」の説明ビデオも作りました。
 このホームページの情報が皆様のお役に立てば幸いと思っています。いくつか「決まりごと」を作っていますので、お使いの際は、ご理解とご同意をお願いいたします。

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